ものづくりベンチャーたくらみブログ

ものづくりベンチャーでの起業をたくらむ20代ハードウェアエンジニアtottiの道程

【技術動向】家電の遠隔操作

世の中の動きを読むためにはテクノロジーの現在地を知ることが重要です(佐藤さんの本の受け売り)。そこでこのブログでも、世の技術要素の現時点での動向をまとめたエントリをちょくちょく書いていこうと思います。

今回のエントリでは"家電の遠隔操作"を取り上げます。

猫も杓子もIoTという世の流れの中で、家電もインターネットへ接続できるのが当たり前となっていくであろうと思われますが、実は2016年3月現在では遠隔操作でスイッチON/OFFができる家電は一部に限られています。その理由は遠隔操作可能な電気用品の種類が法律によって厳しく制限されているためです。 今回は、まずは私が家電の遠隔操作に興味を持って環境を構築した話から入って、その流れで今後の世の中の動きの予想とビジネスチャンスについて考えていきます。

発端

家電を遠隔操作したいと思ったことはありませんか?私は日々思っていました。寒い季節、毎日家に帰って一番にすることはエアコンをつけることです。そして部屋が温まるのを凍えながら待つ。毎日繰り返す苦行を何とかできないかと考えた結果、携帯端末から家電の遠隔操作ができる環境を構築して、家に着く前に前もって部屋を暖めておく事を考えました。構築した環境の模式図を以下に示します。 f:id:totti_y:20160304001930p:plain

※1 IRKitオープンソースな赤外線デバイス。無線LANから赤外線リモコンに対応している家電へのハブ。

※2 リモコンスイッチ:コンセントとデバイスの間でリモコン操作で電源ON/OFFする。天井照明用壁コンセント用がある。

このシステムによって、家に着くまでに前もって明かりを灯し、エアコンを付け、音楽を流しておくことができるようになりました。

2. 不満

しばらくは面白がって使っていたものの、使い続けるうちにいくつか不満な点が出てきました。

  1. 一連の作業がめんどくさい。(携帯取り出して、アプリ開いて、ボタン押して……)
  2. そもそも環境構築の時点でめんどくさかった。
  3. 外から操作しても動作したかどうかわからない。

これらの問題を解決する既製品を探し回ったところ、結局適当なものは見つけられませんでした。調べているうちに見つかったCerevoのスマート電源タップ)はなんと国内発売自粛(!)。その背景にはある法規制の影がありました。

3. 電気用品安全法による規制

上記の商品の発売自粛の理由は「電気用品安全法違反となる“可能性”がある」との指摘を経済産業省から受けたことによります※1。現行の電気用品安全法では、"安全だとわかっているもの”以外の電気用品の遠隔操作を禁止しており、その"安全だとわかっているもの"に当てはまらないと解釈される可能性がある、という指摘です。cerevoは海外にも販売網を持っているので国内は諦めて海外で売る方針に切り替えたようです。 この法律は無線通信がこれだけ一般化した時代に合っていないという考えから、新しい解釈の追加を要望する動きがあり※2、一説では2015年を目途に段階的に法改正が行われるという話もありましたが、現在に至るまで解釈の変更はなされていません。

※1:cerevoホームページ ※2:遠隔操作に対する技術基準の解釈の追加要望

今後

一般的に世の中は便利な方向に向かって進むので、法改正がなされるのは間違いないでしょう。ただし、法改正がなされた後には、今度は複数の家電を一括で管理するニーズが新たに生まれると予想しています。1つの家電に一つのアプリが対応しているのではめんどくさくて敵わないのです。それはさながらすべての家電に別々のリモコンが用意されているようなものです。

一歩戻って考えると、そもそも現時点でも複数の家電を一括で管理するニーズは潜在的に存在しているはずです。家に帰ると誰でも照明をつけてエアコンをつけてテレビをつけています。それらを一括で簡単に管理できる方法は現在ありません。ここに新たな付加価値が生まれる余地があると考えています。