ものづくりベンチャーの仕事【2】 ものを売る仕事
前回の記事で、ものづくりベンチャーの仕事には大きく分けて三種類あるという話をしました。
- ものを作る仕事
- ものを売る仕事
- 会社を運営するために必要な仕事
今回は引き続き2. ものを売る仕事について詳しく考えていきます。
ものを売る仕事
ものを売ることに関わる仕事はたくさんありますが、すべて以下の4つのどれかに分類できます。
- 企画(どうやって売るか考える)
- プロモーション(商品を知ってもらう)
- 販売(商品を買ってもらう)
- 流通(商品を届ける)
※営業がないのに違和感がある人もいるかもしれませんが、営業の本質は2.プロモーションと3.販売を足し合わせた仕事と考えることができます。
順に見ていきます。
1. 企画
この内容は"ものを作る仕事"に含まれる企画と共通です。というのも、*作るもの自体とその売り方は同時に考える必要があるから*です。いつ誰がどこでどうやって売るかが考えられていなければ、何を作れば売れるのかを判断することはできません。そのため、企画のステップはものを作る仕事の一部でもあり、同時に売る仕事の一部でもあると考えられます。どちらかの観点が欠けた企画になると売れないものを作ることになりかねません。
2. プロモーション
プロモーションとは、商品に興味を持ってもらい、実際に買ってもらう行動に移させるための活動全体を指します。つまり、大まかには次の2ステップに分かれます。
- 第一段階:商品への注意の喚起
- 第二段階:商品の購買行動への動機づけ
例えばWeb広告やダイレクトメールなどの広告全般は、知らない人の目に触れることで"商品への注意を喚起"しているので第一段階に分類できます。一方、おしゃれな商品HPの整備や使用例を動画で説明するなどの施策は第二段階の動機づけに当たります。
プロモーションの選択肢はその性格上数限りなく種類があり、また日々新しい手法が生み出されています。また、売る商品によって適切なプロモーション方法が異なるため、メーカーが同業種のものを作り続けるポジティブな理由になり得ます。(∵同じ業種の商品であれば既存商品でノウハウのあるプロモーション方法を踏襲できる範囲が大きいため)
知名度が極めて低いベンチャーにとってプロモーションは欠かせない仕事ですが、資金も限られているためむやみな広告はできません。真に特徴的な商品を作ってファンを獲得し、口コミによって第一段階をクリアするのがものづくりベンチャーのあるべき姿だと考えています。
3. 販売
プロモーションが適切になされた場合、お客さんの次の行動はまさに"買う"事です。販売に関しては他の仕事と比べると選択肢は限られており、大体次の3つから選択することになります。
- 直販(店舗 / 営業)
- 小売店販売
- ネットショップ
このうち元手の少ないものづくりベンチャーで採り得る選択肢は小売店販売もしくはネットショップの二択です。小売店販売はプロモーションの効果も見込めるため、営業力があればよい選択肢となります。実際、小さなものづくりベンチャーの商品でもLOFT等大手小売店の店頭に並んでいることは珍しくありません。逆に営業に力を入れる余裕がない場合や他のプロモーションが成功している場合はネットショップが良い選択肢になります。無料でネットショップを作れるサービス(STORES.jpなど)も多数あるため導入の障壁は高くありません。
4. 流通
メーカーは実際に体積のある"もの"を扱うため、必ずこの仕事が必要になります。さらに細かく内容を見ていくと、
- 調達
- 在庫管理
- 受注処理
- 輸送
など、他にもたくさんあります。商品の流通量=販売数量に比例してボリュームが増大するため、事業が波に乗った第二段階で大きな問題となることが予想できます。流通は規模の経済が働く領域なので、小さな会社が独自の流通網を持つのは最適ではありません。ものづくりベンチャーとして最適なのは、独自の流通網を整備するのではなく既存のフレームワークをうまく利用することです。Amazon Market Placeや保管・発送を代行してくれるサービス(上述のStores.jpの倉庫サービスなど)も多数あるので、商品特性に合わせて適切なものを選択します。
まとめ
今回は売る仕事の全体像について大まかに整理しました。長々と書いたものの、当たり前ですが作る前に売ることばかり考えていては意味がありません。売る仕事は軌道に乗っていないものづくりベンチャーにとっては"絵に描いた餅"、"とらぬ狸の皮算用"となりかねません。付加価値の本質は"ものを作る仕事"であるということを忘れないでおきましょう。