ものづくりベンチャーたくらみブログ

ものづくりベンチャーでの起業をたくらむ20代ハードウェアエンジニアtottiの道程

eclipse × Pydev × nose で快適なTDD環境を立ち上げる

概要

TDD楽しい!

eclipseの強力なGUIベースの環境でTDDを行うために、環境立ち上げからテスト実行・カバレッジの取得まで、立ち上げ方を順にまとめる。

noseのインストール

Python環境のテストフレームワーク色々あるが、その中でも評判の良いnoseを使う。noseはunittestのラッパーで、簡単にテストケースを書けるところが長所。標準のテストフレームワークであるunittestはxUnitの仕様を忠実になぞっているため、ややめんどくさく感じるところがある。

noseのインストールにはpipというパッケージ管理モジュールを使う。 pipを持っていない人はココからインストール。(PleiadesやAnacondaなどのディストリビューションには初めから含まれているので、知らないうちに入っているかも)

次にpipを使ってnoseをインストールする。

$ python -m pip install nose

これだけでインストール完了(簡単!)。noseモジュールを使える状態が整った。

Eclipseの設定

  1. テストランナーを変更する [ウィンドウ] > [設定] > [Pydev] > [PyUnit] のテスト・ランナーの項目がデフォルトでは[Pydev test runner]に設定されているので、[Nose test runner]に変更する。

  2. PyUnitビューを表示する グラフィカルに結果ががわかるとやる気が出るのでテスト結果の確認方法は重要。テストの実行結果はPyUnitビューに表示されるので常に表示しておくべし。 [ウィンドウ] > [ビューの表示] > [PyUnitウィンドウ]を選択して適当な場所に配置する。

テストの実行

あとはテストを書いて実行するだけ。モジュール単体でテストするやり方とプロジェクト全体でテストするやり方がある。

  1. モジュール単位のテスト これはショートカットキーが用意されてる。テスト対象のテストモジュールを開いた状態で[Ctrl+F9]を押すと"Select test to run"というウィンドウが表示されるのでモジュール内のテストを全て実行したい場合はそのままEnter、特定のテストのみ実行したい場合はそのテストをダブルクリックすることで実行できる。

  2. プロジェクト内の全テスト プロジェクト内の全テストを実行したくなることも多々ある。というか、かかる時間が数秒であれば毎回全テスト実行したい。ただしPydev環境では全テストを実施するショートカットキーが用意されていないため、私は次のように実行してる。

  3. 一度目の実行は手動で選択する。Pydevパッケージエクスプローラーで、対象となるプロジェクトを右クリック > [実行] > [Python ユニットテスト] でプロジェクト全体のテストが走る。

  4. 二度目以降は直前の実行をもう一度実行するためのショートカットキー[Ctrl+Shift+F9]を使って実行する。

テストを実行すると、PyUnitビューのインジケータが赤くなったり緑になったりする。これで一通りTDDのサイクルが回せる環境が整った。

コードカバレッジを表示する

さらにコードカバレッジを表示できるようにする。コードカバレッジとは、テスト対象のコードのうち、どこをカバーしているか、どのくらいの割合カバーしているかを示す統計データのこと。これを見ればどのくらいきちんとユニットテストしているかが数値でわかるので参考になる。

  1. coverageビューをインストール 先ほども登場したpipコマンドを使ってインストールする。 なお、最新版のcoverageモジュールを使うとPydev上でエラーが発生したため少し前のバージョンを使用する必要がある。
$ pip install "coverage < 4.0.0"
  1. コードカバレッジビューを表示 [ウィンドウ] > [ビューの表示] > [コード・カバレッジ]を選択
  2. コードカバレッジ対象の設定 ビューの左上の"Enable code coverage for new launches?"にチェックを入れて、"Choose folder to analyze"からテスト対象のプロジェクトを選択

これで準備OK。この状態でテストを走らせると、自動的にコードカバレッジを集計してくれる。 カバレッジレポートの出力例はこちら。

f:id:totti_y:20160409032620p:plain

レポートの各数字の意味合いを以下にまとめた。

列の名前 意味
Stmts 全体の行数(Statements)
Miss テストされていない行数
Cover カバレッジ。Cover = Miss / Stms
Missing テストされていない行番号を列挙

また、レポート内のファイル名をクリックするとテストされていない部分が"Not Executed"となって目立つように表示されるため、 どの部分がカバーできていないかを見ながらテストコードを追加したりできる。

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終わりに

勢い余ってcoverageの導入までしてしまった。 テストやカバレッジをとることは自分のコードを客観的に見られる良い機会なので一人のコーディングでこそ継続したい。

改良点や気になる部分があれば気軽にコメントいただけると嬉しいです。それでは楽しいTDDライフを!

Python × Eclipse で対話式プログラミング環境を立ち上げる

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PythonEclipseで書くのが一番

Pythonの開発環境はなかなかしっくりくるものがなく、IDLE→Pyscripter→ spyderと次々に試した結果、PythonEclipseで書くのが一番良いという結論に至った。 改めて開発環境が生産性に及ぼす影響の大きさを感じている今日この頃。 備忘も兼ねて環境立ち上げまでの過程をまとめておく。

環境


1. Pleiadesのダウンロード→解凍

公式ページからインストール。バージョンは4.5 Marsを選択。OSがWindows7 64bitだったので64bit Full Editionを選択。言語はもちろんPython。 公式の注意にもあるように、解凍時にパスが長すぎる警告が出る場合があるのでC:\直下に置くこと。 その後、解凍後のフォルダ内にあるeclipse.exeを選択して起動。


2. 見た目を変更する

ウィンドウの外観の変更

初期設定のように明るい外観だと目が痛いのでダーク系に変更する。MoonRise UI Themeというプラグインをインストールすることで背景が黒くなる。 インストール手順は以下。 * [ヘルプ] > [新規ソフトウェアのインストール] > [作業対象]のプルダウンからEcripseのバージョン名を選択 > [フィルター入力]に"Marketplace"と入力すると出てくるソフトウェアをインストールする。 * インストール後に再起動すると [ヘルプ] > Eclipseマーケットプレースが追加されているので選択。 * "MoonRise UI Theme"で検索すると見つかるプラグインをインストール。

カラーテーマの変更

[ウィンドウ] > [設定] > [一般] > [外観] > [テーマ] > [色テーマ] から変更できる。 私はEclipse Color ThemesからRainbowDropsをダウンロードしてきて使っている。

フォントの変更

お好みでフォントも変更する。ウィンドウ>一般>外観>テーマ>色とフォントの項目の"テキスト・フォント"を編集すればOK。私は大きめの表示が好きなのでConsolas 12 ptに変更した。 余談になるが、このままだと日本語フォントが汚らしくて気に入らないという方は、こんなやり方でConsorasと任意の日本語フォントを合成して使うことができるらしいのでお試しあれ。

以上で見た目の変更は一通り完了。


3. PyDevのカスタマイズ

対話式コンソールの設定

  1. [ウィンドウ] > [ビューの表示] > [コンソール]でコンソールウィンドウを開く
  2. コンソールウィンドウ右上の[コンソールを開く] > [PyDev Console(3)]を選択する
  3. [Python console]を選択して、そのあとPython2系か3系か好きなほうを選べばOK。

色の設定もやってしまおう。 [ウィンドウ] > [設定] > [PyDev] > [対話式コンソール] でカラーを選択できる。以下のように設定するとMoonrise UI Themeとマッチしてgood。(Moonrise UIのコンソール色設定と合わせた設定)

設定項目
標準出力色 235 235 235
標準エラー色 225 30 46
標準入力色 140 175 210
プロンプトの色 0 255 0
背景色 35 35 35
DebugConsole background color 35 35 35

追記(2016/05/18)

斜体の日本語フォントがおかしいので、設定で斜体にならないように変更する。 f:id:totti_y:20160518230416p:plain

[ウィンドウ] > [設定] > [PyDev] > [エディター]の外観色オプションから、斜体にチェックが入っているオプションのチェックを外していく。 コメントだけ修正するのであれば、"Unicode"オプションのチェックを外せばOK。その後[適応]ボタンを押す。

f:id:totti_y:20160518230507p:plain

以上の設定をしておけば、日本語フォントも正常に表示される。 (対症療法な感じが気持ち悪いが、妥協する。)

f:id:totti_y:20160518230552p:plain


これで対話形式で試しながらプログラミングできる環境が整った。 次回はテスト駆動開発の環境を整える。

【技術動向】スマートホームデバイス企業まとめと今後の方向性

概要

IoTの一分野として成長が期待されているのが"スマートホーム"というカテゴリです。 明確な定義はないけれど、とにかく家の中のモノがインターネットに繋がりまくる。それによって日々の生活をより便利に、より豊かにしようというコンセプトです。"ホームオートメーション(Home Automation"という類似の概念は古くからあり、それがIoTという言葉に紐づいて若干意味合いが変わったようなイメージです。

既に世に出ている有名なプロダクト

上述のように実際にはそんなに新しいコンセプトではないので、既に商品化されて実績を残しているプロダクトが数多くあります。例えば、Googleが高額で買収した"Nest"もスマートホームのプロダクトです。以下に注目に値するスマートホーム関連の企業を簡単な説明を列挙します。

  • Nest サーモスタット(家全体の温度を自動で調節する機器)を人工知能で最適制御するプロダクト"nest"を発売、すでに100万台売れていると言われている。
  • Lockitron 自動で錠前の開閉ができるプロダクト。Bluetoothスマホと連携するので扉の前で鍵もスマホも取り出す必要がない。第二世代機がクラウドファンディングサイトで220万ドルもの資金を調達するなど市場実績も。
  • Withings フランスの企業。売れ筋のWithings Smart Body Analyzerを筆頭に、様々なスマートホームデバイスを発売している。この会社のコンセプトムービーを見るとスマートホームというコンセプトがイメージしやすい。

技術動向のポイント

日々の生活に直接影響を与えるので、使い勝手が最も重要です。Gizmodoのこの記事 にもあるように、接続失敗することがあるとか、設定変更が面倒などといった使い勝手の不備があるものは成功しないと考えてよいでしょう。例えば、上で取り上げたLockitronも第一世代の売り上げは第二世代には遠く及びませんでした。なぜならば、 1. 使い始めるには錠前を専用のものに交換する必要がある 2. 錠前の開閉にはスマホ操作が必要 という制約があったからです。第二世代機ではこの課題を解決したため、爆発的な成功を収めました。

市場としてはまだまだ過渡期といった印象ですが、将来的には必ず浸透するコンセプトだと思われれます。伸び白十分な業界と考えています。

まとめ

  • スマートホームは古くからあるコンセプトがIoTの影響で形を変えたもの
  • 既に成功しているメーカーも多い
  • 商品は使い勝手が最重要

参考にさせていただいたサイト

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クラウドファンディングはハードウェアスタートアップの最適解である

概要

今回のテーマはハードウェアスタートアップの商品開発時にクラウドファンディング(以下CF)を利用するメリットについてです。CFを利用するハードウェアスタートアップは年々増え続けており、もはや当たり前の選択肢となっています。今回はCFがなぜハードウェアスタートアップを立ち上げる最適解と考えられるのかを順を追って説明していきます。

ハードウェアスタートアップとクラウドファンディングの親和性

まず、ハードウェアスタートアップがCFを利用する状況を考えてみましょう。大よそ以下のような流れになります。

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商品を試作して開発のめどが立った段階でCFサービスを活用してキャンペーン展開し、資金調達に成功した場合のみ量産製造以降の工程に進むという進め方です。

ところで、CFで寄付を募集する場合はどれだけ寄付したらどれだけのお礼(リワードと呼ばれる)をお返ししますよ、という宣言をすることになります。ハードウェアデバイスの開発では「開発が成功した暁には商品を(タダで)プレゼントしますよ」といって、寄付金額を商品の予定販売額より少し少なめの金額設定とすることが一般的です。つまり、実質的には予約販売とほとんど変わりません。(※厳密には開発失敗などのリスクを負っている点が異なりますが、その差分は割引額に含まれていると考えるのが妥当でしょう。)CFを利用するということは、商品開発の途中の段階で予約販売の告知をしているのと同じなのです。このことは、スタートアップに以下のメリットをもたらします。

  1. 資金調達できる(商品力だけで!)
  2. 市場調査として機能する
  3. 宣伝できる
  4. ユーザーコミュニティを形成できる

1. 資金調達できる(商品力だけで!)

CFの本来の目的は資金調達なので、成功すれば当然資金を得ることができます。従来の資金調達方法と違うのは、商品力だけで資金調達が達成できる可能性があるということです。 従来の資金調達方法の代表としてはVC、銀行、助成金などが挙げられますが、いずれにも共通しているのが中長期的な"事業計画"を求められることです。また、VCは大きなリターンを狙うためにリスクを取る職業なので、当たった時にデカい、というような"将来性"の要因も重要視されます。 これらの内容も重要ではありますが、顧客にとってはプロダクト自身よりも重要ということはあり得ません。CFでは商品だけが資金調達の成否に関わります。

2. 市場調査として機能する

CFを利用することで、開発途中で市場に対して商品概要を説明して「この商品がいるかいらないか」という最も本質的な問いを投げかけることができます。そして、その問いに対する回答は身銭を切って行うことになるので、まさに正直なフィードバックを得ることができます。これは上質な市場調査として機能します。そのため、もしも資金調達が成功すれば商品像が間違っていなかったことも同時に証明で来たことになります。逆に言うと、もしも商品の方向性が間違っていた場合、最も多くの資金が必要となる量産製造のフェイズより前に過ちに気づくことができるのです。 スタートアップの失敗のうち最も多いのは早すぎる事業規模拡大と言われていますが、CFを利用するとそれを予防する効果を得られるということになります。

3. 宣伝できる

元祖Kickstarterを含めて無数にあるCFサービスは、常に魅力的なプロダクト・企画がキャンペーンされている最先端の情報発信場所となっています。そのため、常に注目されています。また、寄付するほど商品に惚れこんだ人による口コミ効果も期待できます。さらに言うと、CFサービス上の商品をチェックしているような人はキャズム理論で言うところのイノベーターやアーリーアダプターにあたるような人が大半を占めると思われるため、新しいデバイスのプレスリリースを掲載するには打ってつけのメディアと考えられます。

4. ユーザーコミュニティを形成できる

大企業に対するベンチャー企業の弱みとして、既存顧客のコミュニティを持たないことが挙げられますが、CFを利用することでその弱点をカバーできる可能性があります。多くのCFでは、商品に寄付するとその商品専用のHPへのアクセス権が付与されて、そこでは開発進捗の報告や寄付者同士のコミュニケーションができるような環境が整備されています。そのような環境では、商品の発売前から自然にユーザーコミュニティを発達させることが可能です。 ユーザーコミュニティの存在は商品の方向性を決めるうえで重要ですし、参入障壁になり得るという点でも意味があります。そのため、開発途中の段階でユーザーコミュニティが獲得できるということ自体にも大きな価値があると考えられます。


以上のように、CFというビジネスモデル自体がものづくりの為に生まれたのではないかと思うほど、ハードウェアスタートアップとCFの相性は抜群です。(べた褒めしすぎてCFの回し者みたいになってしまった感がありますが…;p)冷静に見てもメリット多数かつデメリットがない(と思っている)ため、今後スタンダードになっていく方法だと思います。

まとめ

参考にさせていただいたサイト

商品開発のQCDを理解して最適開発を実現する

概要

QCDはQuality/Cost/Deliveryの頭文字をとった略語で、ビジネスのフレームワークの一つです。このエントリではQCDを切り口に商品開発という仕事を考えることで、ものを作る仕事の理解を深め、必要に応じて使いこなすことで最適な開発に近づけることを目的とします。

商品開発のQCD

仕事の本質は"付加価値の創造"です。従って、すべての仕事はQCDでその価値を測定できます。(逆に言うと、QCDで測定できない活動は仕事とはみなせません)。商品開発の仕事ももちろん例外ではなく、その成果は以下のようなQCDで表すことができます。

  • Quality:作り上げる商品の品質
  • Cost:開発費用
  • Delivery:納期

"Cost"についてはものを作る原価の方が先に思い浮かぶ方もいるかもしれませんが、原価は商品自体の"Cost"であって開発の"Cost"とは区別します。商品の原価が安くなることは商品の付加価値が大きくなるということなので、原価が安くなる=商品開発のQualityが高くなると考えます。

開発計画=QCDのバランス調整

QCDは付加価値に直結するため、商品開発の最上流ともいえる開発計画に関わってきます。開発計画を検討する時点でQCDのバランスが整えられるのです。例えば、どのような質の商品をいつまでに作るかが決まれば開発費用は大よそ決まりますし、商品の質と開発費用が決まっている場合はそれで可能なところに納期が定められることになる、という具合です。言い換えると、開発計画 = 商品開発のQCDのバランスを整える作業ともいえます。QCDのバランスが整わない商品企画(作るのに多大なCostがかかるのにはQualityはそこそこ止まりなど)はボツになりますし、そうすべきです。

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QCDの関係式

QCDは互いに複雑な相互関係を持っています。この相互関係を定式化することを試みます。

まず、3つのパラメータのうち1つを固定した状態で1つを変化させたとき、残り1つのパラメータがどのように変化するかを定性的に考えてみます。例えばDeliveryを固定してCostを減らしたとすると、Qualityは当然下がります。

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このように全6パターンを考えていくと、以下のようになります。

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次にこれらの傾向と意味合いを考えていきます。

  • D一定の場合、Q⇔Cには正の相関があります。これは、同じ期間でより品質の高いものを作ろうとするとコストも上がるということを意味します。QとCの関係は比例ではなく、以下のような傾向があると予想されます(よりQualityの高いものを作ろうとすると、どんどんかかるコストが増えていくイメージ)。

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  • Q一定の場合、C⇔Dには負の相関があります。これは、同じ商品の質を担保しながら時間を短縮するにはコストを増やす必要があるということを意味します。単純に人数を倍にしても納期が半分にならないことからわかるように、この関係も比例ではなく徐々にコスト上昇幅が大きくなっていきます。

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  • C一定の場合、Q⇔Dには正の相関があります。これは、同じ開発費用で納期を短縮するには商品の品質を犠牲にせざるを得ないということを意味します。

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以上のように、QCDは互いに複雑な相関関係があります。このままでも使い勝手の良い考え方ですが、さらに使い勝手を良くするために大胆に単純化して考えてみます。全ての相関関係を比例関係に近似して考えると、QCDの相関関係は以下のような簡潔な関係式で表現することができます。

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これで、あるパラメータが変化したときにその他のパラメータがどのように変化するか直観的にわかるようになりました。例えば、納期を短くするには開発費用を増やすか商品品質を下げるかの2択であることがすぐにわかります。

まとめ

  • 商品開発のQCDはQ = "商品の品質"、C = "開発費用"、D = "納期"または"発売日"。
  • 企画や開発計画では、QCDのバランスが整っているかどうか確認することが重要。
  • QCDは互いに複雑な相関関係にある。割り切って単純化すると、Q = C × D で表すことができる。

【技術動向】家電の遠隔操作

世の中の動きを読むためにはテクノロジーの現在地を知ることが重要です(佐藤さんの本の受け売り)。そこでこのブログでも、世の技術要素の現時点での動向をまとめたエントリをちょくちょく書いていこうと思います。

今回のエントリでは"家電の遠隔操作"を取り上げます。

猫も杓子もIoTという世の流れの中で、家電もインターネットへ接続できるのが当たり前となっていくであろうと思われますが、実は2016年3月現在では遠隔操作でスイッチON/OFFができる家電は一部に限られています。その理由は遠隔操作可能な電気用品の種類が法律によって厳しく制限されているためです。 今回は、まずは私が家電の遠隔操作に興味を持って環境を構築した話から入って、その流れで今後の世の中の動きの予想とビジネスチャンスについて考えていきます。

発端

家電を遠隔操作したいと思ったことはありませんか?私は日々思っていました。寒い季節、毎日家に帰って一番にすることはエアコンをつけることです。そして部屋が温まるのを凍えながら待つ。毎日繰り返す苦行を何とかできないかと考えた結果、携帯端末から家電の遠隔操作ができる環境を構築して、家に着く前に前もって部屋を暖めておく事を考えました。構築した環境の模式図を以下に示します。 f:id:totti_y:20160304001930p:plain

※1 IRKitオープンソースな赤外線デバイス。無線LANから赤外線リモコンに対応している家電へのハブ。

※2 リモコンスイッチ:コンセントとデバイスの間でリモコン操作で電源ON/OFFする。天井照明用壁コンセント用がある。

このシステムによって、家に着くまでに前もって明かりを灯し、エアコンを付け、音楽を流しておくことができるようになりました。

2. 不満

しばらくは面白がって使っていたものの、使い続けるうちにいくつか不満な点が出てきました。

  1. 一連の作業がめんどくさい。(携帯取り出して、アプリ開いて、ボタン押して……)
  2. そもそも環境構築の時点でめんどくさかった。
  3. 外から操作しても動作したかどうかわからない。

これらの問題を解決する既製品を探し回ったところ、結局適当なものは見つけられませんでした。調べているうちに見つかったCerevoのスマート電源タップ)はなんと国内発売自粛(!)。その背景にはある法規制の影がありました。

3. 電気用品安全法による規制

上記の商品の発売自粛の理由は「電気用品安全法違反となる“可能性”がある」との指摘を経済産業省から受けたことによります※1。現行の電気用品安全法では、"安全だとわかっているもの”以外の電気用品の遠隔操作を禁止しており、その"安全だとわかっているもの"に当てはまらないと解釈される可能性がある、という指摘です。cerevoは海外にも販売網を持っているので国内は諦めて海外で売る方針に切り替えたようです。 この法律は無線通信がこれだけ一般化した時代に合っていないという考えから、新しい解釈の追加を要望する動きがあり※2、一説では2015年を目途に段階的に法改正が行われるという話もありましたが、現在に至るまで解釈の変更はなされていません。

※1:cerevoホームページ ※2:遠隔操作に対する技術基準の解釈の追加要望

今後

一般的に世の中は便利な方向に向かって進むので、法改正がなされるのは間違いないでしょう。ただし、法改正がなされた後には、今度は複数の家電を一括で管理するニーズが新たに生まれると予想しています。1つの家電に一つのアプリが対応しているのではめんどくさくて敵わないのです。それはさながらすべての家電に別々のリモコンが用意されているようなものです。

一歩戻って考えると、そもそも現時点でも複数の家電を一括で管理するニーズは潜在的に存在しているはずです。家に帰ると誰でも照明をつけてエアコンをつけてテレビをつけています。それらを一括で簡単に管理できる方法は現在ありません。ここに新たな付加価値が生まれる余地があると考えています。

ものづくりベンチャーの仕事【3】 会社を運営するために必要な仕事

前回と前々回に引き続き、ものづくりベンチャーの仕事内容を考えていきます。

1. ものを作る仕事 2. ものを売る仕事 3. 会社を運営するために必要な仕事

最終回の今回は、3. 会社を運営するために必要な仕事について考えます。

ものを作って売る以外の仕事

ものを作って売れれば会社として成り立つように思ってしまいがちですが、実際には(当然ながら)それだけでは会社を維持することはできません。特に次の3つの仕事は、どんな会社でも欠かすことができないものです。

  1. 全体最適を考える仕事
  2. 資金調達
  3. 法律で義務付けられている仕事

全てが重要で、ミスすると文字通り命取りになりかねない内容です。順にブレイクダウンしていきます。

1. 全体最適を考える仕事

会社全体として最適な判断は何かを考える、会社にとって最も大切な仕事です。作る仕事や売る仕事をしていると、どうしても自分の業務範囲を中心に物事を考えてしまいがちです。そこで、会社全体で見たときに何が最適かを判断して実行する仕事をする時間を別に取る必要があります。

普通の会社では人によって役割が分かれていることが大半でしょうが、ベンチャーでは社員数が10〜20人を超えるあたりまではプレイヤーも兼ねることが多いと聞きます。具体的な業務内容は会社の規模によって千差万別ですし、まだまだイメージできていない内容も多いので一例を挙げるにとどめます。

  • 経営戦略
  • 給与体系
  • 役割分担
  • その他たくさん

2. 資金調達

会社として活動するためには資金がいります。なければ調達する必要があります。調達方法は大きく分けて次のような選択肢があります。

  1. 知り合いからの出資
  2. 助成金
  3. ベンチャーキャピタルからの出資
  4. 銀行借入
  5. クラウドファンディング

1〜4まではベンチャーでは一般的な方法で多くの情報があります。特にこのサイト(http://www.linzylinzy.com/funding.html)がわかりやすくておすすめです。このサイト以上のことは語れないので1~4の詳細は割愛します。 さて、ここで詳しく触れたいのはものづくりベンチャーならではの選択肢と言える5. クラウドファンディングです。 クラウドファンディングとは、ざっくり言うと未完成の商品の予約販売ができるシステムです。(厳密には販売ではなく寄付にあたりますが、実際には予約販売として機能しています。詳しくはWikipediaなど参照) このサービスはものづくりベンチャーにとって単なる資金調達の選択肢ではなく、以下のようにさまざまなメリットがあります。

  1. 一種の市場調査として機能するため、仮説検証の場となる
  2. 出資者(=未来の顧客)とコミュニティを構成できるため、ニーズの吸い上げが可能
  3. サイトに商品説明を載せるため、イノベーターに対して効果的に宣伝できる

このように、クラウドファンディングサービスはものづくりベンチャーが持つ弱点(検証の場がない、知名度がない、コミュニティがない)をカバーするような働きを持ちます。これを利用しない手はありません。実際に世界中の多くのモノづくりベンチャーがKick Starterなどのクラウドファンディングサービスを通じて世界中に商品を発信しています。 今後の起業準備ではクラウドファンディングサービスを利用する方針で準備を進めていくつもりです。

3. 法律で義務付けられている仕事

文字通り、法律で’これをやりなさい’と決まっている仕事です。やらなければ違法なので、やらざるを得ません。株式会社、合同会社、個人事業主など会社の種類によって義務付けられている内容は異なります。 また、メーカーとして活動するには特殊な届け出が必要な場合があります。例えば、電気用品を作るならば電気用品安全法に基づいて事業届出を行う必要があります。 必要最低限の労力で済ませたい仕事ではありますが、ミスがあると大きいため疎かにはできません。大きな会社であれば各手続きの専門家を社内に確保することも可能ですが、ベンチャーとしては十分なメンバーが揃うとは考えにくいため、必要に応じて社外の行政書士に業務依頼する等、プロの力を借りるのがリーズナブルな選択となりそうです。

まとめ

  • ものづくりベンチャーと言えども作って売る以外の仕事もしなければいけない
  • 全体最適を考える仕事と具体的な仕事は区別して扱う
  • ものづくりベンチャーならではの資金調達方法と言えるクラウドファンディングはとっても有用。それありきで起業までの道筋を考える
  • 法律で義務付けられている仕事は必要に応じて外注を検討する